夏祭りだよ! アンソロバトル『GJ部』by日日日
2010年8月18日
編集部☆です。
昨日予告させていただきました、 日日日先生によるアンソロ『GJ部』、
解禁です!
あのキャラがあんなふうに?????
悪ノリをこじらせた(笑)? 日日日先生の、すべてを猛暑のせいにしようとする
渾身のアンソロ、お楽しみあれ!!!
日日日です。
打合せとかで「GJ部みたいなの書きたいんです~」「でもGJ部では~」みたいな
発言ばかりしてたら「GJ部GJ部うるせえよ!」と怒られたので、アンソロジーに
なりました(途中に校閲が入ったかのような繋がらない文章)。
新木先生からも「ささみさん」を書いていただいて、イラストの指定とかGJ部って
こうやってつくってるんだ! と感心。僕もいつか「NG部(ネガティブ)」とか書
きたいです。
「きらら野生する」(著/日日日)
(著/新木 伸)より
いつもの放課後。
京也が欠伸をしながらGJ部の部室扉に手をかけると、同時に「ばごん!」と爆発するような音を炸裂させて綺羅々さんがでてきた。
「あう~。」
いつも野生動物のようにマイペースなこのお姉さんには珍しく、顔面ぐちゃぐちゃ、鼻をつまんで泣きべそ。
そんな世にも珍しい綺羅々さんは、扉におでこを痛打して地味に悶えていた京也に気づくと、両親を見つけた迷子のようにふらふらと近づいて。
「あうう。きょろ~。」
癒しを求めるように京也を抱きしめ、その立派な胸元でぎゅうぎゅうしたが、やがて「あう~。」とまた顔をしかめて京也を床に叩きつける。
だが京也への最大のダメージは、その直後に発せられた彼女の言葉そのものだった。
「あうう~。きょろ。くさい~。」
男子高校生にとって、そのまま不登校になってもおかしくない発言だった。
「きらら。こまった。」
ぐずぐずと花粉症みたいに鼻をすすって、綺羅々さんは唸る。
「きらら。くさったにくはガマンしてたべるけど。くさいのだけはガマンできない。」
「いや、腐ったお肉は食べちゃだめですよ!?」
暴行をくわえられたのに律儀につっこむ京也を残して、綺羅々さんは再び「あうう~。」と部室に戻っていってしまった。
「いったい何なんだろう……?」
自分の二の腕に鼻をくっつけ、すんすん匂いを嗅いで気にしながら、京也はGJ部の室内にようやく足を踏みこんだ。
最初に目に飛びこんできたのは、「密室殺人の被害者です!」と言わんばかりに仰向けに倒れこんでいる恵ちゃんだった。
足がこっちを向いていて、スカートの中身がすこし見えそうだが、ゆるふわに見えてガードがかたい女の子なので最終防衛ラインは死守していた。
「はうぅ……」
死んではいないようで、恵ちゃんは胸の前で両手を絡めて何かに満足したような、お肌つやつやの良い笑顔でかるく喘いでいた。
「ぁ……くふぅん……」
妙にえろいが、気のせいだと信じたい。
京也はどきどきしている場合ではなかったので、恵ちゃんを助け起こす。
「どうしたの、恵ちゃん? 知能指数が50ぐらい削られたような顔をして」
「四ノ宮くん……わたしたちは、野獣を――危険な野獣を目覚めさせて……さ、最期にみんなにもういちど、美味しいお茶をいれてあげたかっ……ガクッ」
「恵ちゃーん! 君はこんなときにまで他人のことを……!」
「うぉおい、三流コントやってんじゃねーよそこのゆっくりども!」
やんちゃな声が聞こえてきたので、京也はそちらに視線を向ける。
ぶっちゃけ狭い部室なので、部屋に入ってきた瞬間からそこに存在するものには気づいていたのだけど、関わりたくなかったので京也は見ないふりをしていたのだ。
それは――。
邪魔くさいことに、なぜか部屋の真ん中に置かれた掃除用具入れ。
「あうう~。あううう~。」
謎の鳴き声(?)をあげながら、その掃除用具入れに体当たりを繰りかえす綺羅々さん。
「ひいいっ、やめろ! よせ、揺らすな! マジ怖いってちょっと!」
その掃除用具入れの天辺に猫みたいに乗って、長い髪の毛を逆立てているGJ部のちびっこ部長――真央だった。
京也は恵ちゃんのそば、つまり癒しのちからがあるパワースポットに待機したまま。
「……何してんですか部長。新しい遊びですか?」
「わたしが遊んでるように見えんのか!? ハリウッド映画でいえば冒頭五分以内に必ず発生するアクションシーンの真っ最中だっつーの! ていうか助けっ、助けろーっ!!」
「そもそも、何事なんですか?」
「見てわかんねーのか、このゴミ! キョロ! ブサイク! ぜんぶ足してゴキブリ!」
『リ』はどこからきたんだろう。
「あうう~。きょろ~。」
掃除用具入れに突撃を繰りかえしていた綺羅々さんが、ぐすん、という顔をしてふりかえってきた。
「ぶちょー。かわいくてすきだけど。くさいから。ほろぼさなくてはいけない」
「すごい理不尽なこと言われてやがる!? くっそう、楽しくなってきたぜ!?」
揺らされすぎて変なテンションになった部長が、綺羅々に噛みつく。
「ていうか、さっきから臭い臭い連呼しやがって! あたしは臭くない!」
「くさいもん。ぶちょー。くさい。」
「臭くない!」
「くさい!」
「うがるるるる!」
「ぎゃおーっす!」
「部長まで野獣化した!?」
「いけない……野獣化したお姉ちゃんの戦闘力は通常の三倍――あれは忘れもしない小学校のクリスマスのとき――」
「恵ちゃんがいつのまにか復活して解説を始めた!?」
びびっている京也の横で、恵ちゃんがぺこりと会釈をする。
「えっと、わたしたち今日は二人で部室にきたんですけど。素早いお姉ちゃんとちがって、鈍くさいわたしは逃げ遅れちゃって……その……」
もじもじと。
「綺羅々さんに『くさい。めぐ。くさい~。』と、消臭剤を染みこませたタオルで全身をその……揉みくちゃに……」
「あぁ、よく見たら綺羅々さん、タオル持ってるね」
ふんわりした、高価そうなタオルを、綺羅々さんは装備している。
あれで全身を摩擦されて、恵ちゃんはぐったりして倒れていたのだろう、さっきまで。
恵ちゃんは「ぐっ」と拳を握りしめると。
「すごい消臭剤なんですよ。匂いがこびりついたものでも、タオルに染みこませてさっと一拭きで見事に消臭!」
「恵ちゃんって、たまに主婦みたいだよね」
「主婦……!?」
がびーんとしている恵ちゃんの横で、京也は周囲を名前のとおりきょろきょろ。
「それより、紫音さんが見当たりませんけど……今日はまだきてないのかな?」
「ふふん、灯台もと暗しという言葉を思いだすといいよ――キョロくん」
声は掃除用具入れのなかから聞こえてきた。
「うわっ、びっくりした!?」
「やぁ、キョロくん。驚かせてしまったね……どうも、私の行動はときどき、ひとの意表をつくようでね」
掃除用具入れのなかで、紫音さんが苦笑している。
「私はいちばん最初に部室にきていたのだけど、凶暴化した綺羅々に追いかけ回されてね――でも部長ほど運動能力がないから、とりあえずの避難としてこのなかに隠れたのだよ」
自慢げに。
「綺羅々と私の運動能力を対比したうえでの、この咄嗟の判断力……我ながら天才的だ。難を言えば外に綺羅々がいるのでここから出られないのと、だんだん息苦しくなってきて……酸素が、酸素が欲しい……」
「あんたほんとは天才じゃないだろ!?」
思わず暴言を吐いてから、はっと我にかえった京也は紫音さんに問う。
「けれど、なぜキララは暴走を……?」
「わからないけれど、推測することは可能だろうね。部長も私も動けない、キミだけが頼りなんだよ――情けない話だけどね……。どうか、私たちを助けてくれ。もちろんそれは、綺羅々を含めての話だよ?」
「わかってます」
京也はしっかりと頷いた。
「僕たちは、同じGJ部の仲間なんですから!」
「ふふふ、キョロくんはたまに私をクラッとさせるよね――いいだろう、そんなキミのために助言を与えようではないか。いいかい、よく聞きたまえ……おわっ!?」
綺羅々の体当たりが掃除用具入れをおおきく揺らし、その側面を凹ませる。
すごいパワーだ――呑気にしてはいられない。
「あぁ、びっくりした。ともかく、いいかいキョロくん――綺羅々が野獣化したのは、彼女の発言からみて『臭い』せいだと思う。GJ部に漂う異臭が、彼女をおかしくさせたのだ……」
紫音さんの透明な声音が、京也に染みこんでくる。
「わかるかね? 文字どおり、臭い匂いは元から断て――異臭の原因を排除すれば、綺羅々の暴走は収まるはずだ。そこで問題になってくるのは、いつものGJ部には異臭などしない、ということだ。つまり、いつもは部室に存在しない何かが、すべての原因なのだよ」
そこまでヒントを並べてから、紫音さんは優雅な笑い声をあげた。
「考えたまえ、キョロくん。キミは、やればできる子なのだから」
「そうか、だから紫音さんは最初に『灯台もと暗し』って言ったんですね」
京也には、すべてがわかった。
そして真犯人を指摘する名探偵のように。
「異臭の原因は――その掃除用具入れです!!」
そうだ、最初からおかしかったのだ。
いつもはこんなもの、GJ部の室内には存在しない。
京也には、すべてのからくりが理解できた。
「こんな簡単なことを、今まで見落としていたなんて……」
GJ部の面々に、蕩々と真相を述べる。
「その掃除用具入れは、長年、この学校で使われてきたものですが――汚れと匂いが酷くて廃棄処分にされることになったんです。僕はそれを学校の裏庭のゴミ捨て場に捨ててくるように先生に命じられて、がんばって運んだ……」
堂々と。
「けれど、その途中で校庭で遊んでいる友達に『人数足りねぇんだよ!』と野球に誘われて、仕方なく掃除用具入れを手頃なところ、つまりGJ部の部室に置いてワンゲームだけ協力することにしたのでした……。なのに何だか熱中してしまって、そのまま忘れていた……!」
掃除用具入れを運ぶときに、その匂いが制服に染みついていたからこそ、部室に入る前の京也のことも綺羅々は「くさい。」と言ったのだ。
謎はすべて解けた。
「あぁ、すっとした。そうだそうだ、何か忘れてると思ったんですよね――よかった、この騒ぎの原因もわかったし、忘れていた仕事も思いだせましたし、一件落着ですね☆ あ、あれ……どうしてみんな、そんな怖い顔をしてるんですか……?」
気がつけば掃除用具入れのうえから跳びおりてきた部長、なかから出てきた紫音さん、にこにこ笑顔の恵ちゃん、泣きべその綺羅々が――京也を取り囲んでいた。
京也はびびってあとじさったが、狭い部室だ、逃げ場はなかった。
「な、何ですか。たしかに僕のせいでみんなに迷惑をかけたかたちになりますけど、誰にだってど忘れとかあるじゃないですか! まさかキララが暴走するとは思いませんし、その、えっと――僕らは、同じGJ部の仲間じゃないですか!」
良い台詞を繰りかえしてみたのだが、誰も許しちゃくれなかった。
「おまえの……せいかぁあああああ!!」
凶悪に叫ぶ部長に「おまえにはわかるか、臭い臭いと連呼されたときの女の子の気持ちが!! これはメグのぶん! これはシイのぶん! そしてこれはこのわたしの怒りだーっ!」と蹂躙される京也の横で――。
恵ちゃんに、そっとラベンダーの香りがするお茶を手渡された綺羅々が。
「る。いいにおい。」
ほっこりと笑顔を取り戻して。
「きらら。しあわせ。」
ひとしれず満足していたとか。
そんな、いつものGJ部なのであった。
了
いかがでしたでしょうか、日日日版『GJ部』。
『NG部』(ネガティブ)も気になるところではありますが、
明日は新木先生の『ささみさん@がんばらない』です!
お楽しみに!
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