〈チキチキ新人作家アンソロバトル〉小木君人先生が書く『邪神大沼』の○○かわいいよ、○○

2010年6月25日

第一回チキチキ新人作家アンソロバトル、ラストを飾るのは小木君人先生です。
いやー、昨晩深夜は全国民注目の『クドわふたー』発売でしたね。
トゥーリオも「日本人になれたことを誇りに思います」って言って泣いてた。
 
さて、クラシカルでハートフルなラブコメとJOJOをこよなく愛する小木先生が『邪神』なんてボッコボコにしてやんよ!(ネギで)という思いを込めて書いたかもしれないシュートな(プロレスじゃなくてシュートな←大事なことなので二度言いました)『邪神大沼』二次創作です。
では小木先生どうぞ!



この物語は小木君人の妄想であり、実在の『邪神大沼』とは異なります。間違ってもオフィシャルなストーリーではありませんので、ご注意ください。




『在りし日の露都』(著/小木君人)

※「邪神大沼」シリーズ

(著/川岸殴魚)より


 とある小学校、四年生の教室にて。
〝勇者処たなか〟十五代当主である田中尾留手画の娘・露都は、クラスメートたちが「先生、さようなら」とお辞儀をしている間に動きだした。
「行くぞ勇児!」
「ま、待ってよ、露都ちゃん。僕、返さなきゃいけない本があるから図書室に……」

 あたふたとランドセルを背負う堀勇児。露都とは、小学一年生のとき、同じクラスになって以来の仲である。お互いの家も近く、毎日一緒に帰っている。
「本なんて明日でいいだろ! それより特訓だ!」
 露都は勇児の手をぎゅっとつかむと、勢いよく駆けだした。強引に引っ張られ、何度も転びそうになりながらあとに続く勇児。
 クラスメートたちにとってはもはや見慣れた光景だった。引きずられていく勇児を憐れむような目で見送りながら、淡々と帰る準備する。
 
「えい! なんとかストラッシュ!」
 ごんっ。
 露都の振り回した棒きれが勇児の側頭部を打つ。
「痛いっ! ……うわ~~~ん、露都ちゃんがぶったぁ~!」
 へたり込んで泣きだす勇児。
 二人は学校近くのさびれた公園にいた。ベンチはボロボロで、唯一の遊具であるブランコには〝使用禁止〟の札が貼られている。二人以外でこの公園にやってくる子供は滅多にいない。
「泣くな、勇児! っていうか、あれくらいよけろ! 今日は回避率の高いゴーストと戦うシミュレーションをしてるんだぞ!」
「む……無理だもん。……僕、ゴーストじゃないもん……!」

 大粒の涙をこぼしながら、勇児は恨めしそうに露都を見上げる。
 一人前の勇者を目指す露都は、放課後の〝特訓〟を欠かさずにいた。つき合わされる勇児はたんこぶや生傷が絶えない。
「ええい、情けない奴! まったくスライムなみの弱さだな、勇児は! そんなんじゃ将来私のパーティーに入れてやらないぞ!」
「うわ~~~~~~~~ん! 露都ちゃんの意地悪~~!」

 露都の叱咤に、勇児はますます泣きじゃくった。
 空が赤くなるまで特訓は続いた。
 
「勇者ごっこは構いませんけどね、棒きれで人の頭を殴るなんて冗談じゃないわッ!」
 夜の七時過ぎ、勇児の母親がやってきて〝勇者処たなか〟の戸をガンガンと叩いた。息子の頭に出来たたんこぶに気づき、怒り心頭に発して抗議しに来たのだ。
「息子になにがあったのか聞き出すまで二時間もかかったんですよ! 親に言いつけたらもっといじめるって、露都ちゃんが脅してたんじゃないんですか!?」
 すさまじい剣幕でまくしたてる勇児の母親。田中尾留手画は「本当にすみません」と何度も繰り返しながらぺこぺこと頭を下げた。
 露都も頭をつかまれ、無理やりに下げさせられる。
(ふん……あれは勇児の特訓でもあるんだ。多少の怪我は当たり前じゃないか)
 勇児の母親が帰ったあと、今度は尾留手画にたっぷりと説教をされたが、露都は最後までごめんなさいとは言わなかった。
 
「行くぞ勇児!」
 翌日の放課後、相変わらず露都はフライング気味に席を離れ、勇児の手をつかむ。そのまま走りだす。
 しかし今日の勇児は抵抗した。腰を落とし、脚を踏ん張る。つないだ手が外れてしまい、露都は怪訝な顔で振り返った。うつむく勇児がおどおどとつぶやく。
「お母さんが……もう特訓はやめなさいって……」
 露都の頰がひくっと動いた。いらだたしげに勇児を睨む。
「お母さんに言われたからァ? まったく本当に情けない奴だな、おまえは」ハァッと、乱暴にため息をつく。

「親に言われたらなんでも言うことを聞くのか、このマザコンめ」
 その言葉を聞いた瞬間、勇児はバッと顔を上げた。
 怒っているような、今にも泣きだしそうな目でじっと見つめられ、

「な……なんだその顔は……」露都は思わず一歩退く。
「ぼ……僕だって……」
 勇児の肩がわなわなっと震えた。
「ずっと我慢してたけど……僕だって、ぶたれたりするの、嫌だったもんッ!」
 ランドセルをひっつかみ、勇児は教室を飛び出す。
 二人が友達になって初めての反逆。露都は一瞬ぽかんとしたが、慌ててあとを追い、廊下を走る勇児の背中に怒鳴りつける。
「お……おまえなんて絶対私のパーティーに入れてやらないからな~ッ!!」
 勇児は振り返らなかった。
 
 それから数か月が過ぎ、露都は五年生になった。父・尾留手画が活火山の火口に落下して死去。露都が十六代当主となる。
 勇児とは、あれ以来一度も言葉を交わしていない。別のクラスになってもときどき廊下ですれ違ったりするが、お互い無言で顔をそらした。
 さらに月日は流れ、露都は六年生になり、あっという間に卒業式。
 来賓の退屈な話をぼーっと聞き流しながら、露都は勇児のことを考える。一週間前、露都が仕事で家を空けていたときに、彼から電話がかかってきたそうだ。
(勇児はどこの中学に行くんだろう……。家が近いとはいえ、別々の中学になったら、ますます話をする機会はなくなるな……)
 勇児から電話があったと聞いて、露都は何度もこちらからかけ直そうと受話器を取った。しかし、かけられなかった。
(あの日の私は言いすぎた。謝るべきなのはわかっている。でも……)
 あのときはごめんな、と素直に謝るには時間が経ちすぎた。なにを今さらと自分でも思う。だがしかし、このままでは一生仲直りすることはできない。
(今日は卒業式。これ以上のきっかけは多分もうない)
 謝って、許してもらえるだろうか?
(勇児は電話をかけてきた。きっと勇児も、仲直りしたいって思ってくれているはず。大丈夫……!)
 やがて卒業式が終わる。卒業生たちは最後のホームルームを受けるために教室へと向かう。露都は勇児のクラスの一団に近づき彼を捜したが見つからない。涙目で洟をすすっている女子の一人に訊いてみた。
「堀勇児くん? 堀くんなら先週引っ越しちゃったよ」
「……え?」
「おうちの急な都合だって。だから堀くんだけ一週間早く、卒業しちゃったんだよ」

 
 露都はホームルームをすっぽかし学校を飛び出した。
 走って、走って、勇児の家の前までたどり着く。勇児の家は、昼間だというのに雨戸が閉まっていた。
 肩で息をしながら呼び鈴を押す。
 しかしいくら待っても、何回押しても、返事はない。
(嘘だろ……こんなのって……)
 露都はいつまでも呼び鈴を押し続けた。頭の中が真っ白で、もう自分がなにをしているのかわからない。この行為になんの意味があるのかもわからない。
 それでも呼び鈴を押し続けた。
 
 それから数年経ち、露都は高校生になる。
 そして邪神・大沼貴幸と出会った。
 
「くたばれ邪神!」バキッ。
 露都の右ストレートが大沼の顔面にヒットする。これといって珍しくもない、朝の光景。
「な、なにするんだよ、いきなり! ひどいじゃないか!」
 校庭に倒れ、腫れ上がった顔面を押さえながら大沼が抗議する。
「黙れ! 仲間になりたそうな視線で私のことを見るからだ!」
「言いがかりだ! チラッと目が合っただけじゃないか!」
 涙目で露都を見上げる大沼。
 その顔が一瞬、勇児と重なって見えた。露都は息を呑んで言葉を失う。
(こ、こいつ……。今気づいた、どことなく勇児に似ている……!?)
 邪神なのに未だに倒さずにいるのは、それどころがときには助けてしまったりしたのは――彼に似ていたから?
 あの日の罪悪感が蘇る。同時に、あの頃は気づかなかったほのかな恋心も。
 露都の顔がカーッと赤くなった。
 と――カッポ、カッポ、と蹄を鳴らしながら、大沼の後ろにラクダがやってくる。
「主の忘れ物を届けに追いかけてみれば……。おのれ勇者め、許しませんよ」
 ラクダ――明けの明星号――の上から、〝邪神マニュアル〟付属スターターキットのナナが、険しい目つきで露都を睨みつけた。
「……やる気か……?」露都は動揺を隠しながら、背中の長剣をすらりと抜く。
「ちょ、ちょっとやめてよ二人とも!」
 慌てて仲裁に入ろうとする大沼。ナナは今度は大沼を睨んだ。
「駄目です。主が殴られたのを黙って見過ごしては、スターターキットの名折れですから。やられた分は百倍にして返しませんと」
「そ、そんな大げさな! それほど痛くもなかったし――ほ、ほら僕、邪神だから!」
「え?」
ナナがきょとんとした顔で大沼を見つめる。
 腫れ上がった彼の顔面をじーっと眺め、しばらくしてからにこっと微笑んだ。
「なるほど、〝貴様の攻撃など、蚊に刺されたほどにも感じぬわ〟ということですね。邪神らしい見事な威厳と余裕です。さすが我が主、感服いたしました」
 ふふふ、と嬉しそうなナナ。大沼も引きつった顔で笑う。
 あはは、うふふ……露都にはまるで仲のいいカップルのように見えた。
 不意に、それが無性に気に入らなくなった。
「この……邪神のくせに!」ボカッ。
 露都の右ストレートが大沼の顔面にヒットする。またぶっ倒れる大沼。
「ひどい! 僕は無益な戦いを避けようとしたのに! あと同じ場所はやめてくれ!」
「う……うるさい! 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ッ!」

 さっきよりもさらに腫れ上がった顔面を押さえながら抗議する大沼に、露都は〝馬鹿〟を雨あられと叩きつけた。肺の空気を出し尽くすまで〝馬鹿〟と言って、脱兎のごとく走りだす。
 大沼たちと十メートル近く離れてから、露都は立ち止まり、くるっと振り返った。
 唖然としている大沼に向かって、べーっと舌を出す。
「お……おまえなんか絶対仲間にしてやらないからなーッ!」
 捨て台詞を残して、露都は校門を走り抜けた。



『大沼』なのにシリアス展開(?)、そして小学生女子(笑)というあたりに小木先生らしさが出ていたのではないでしょうか! これじゃあ露都じゃなくて炉都だぜ……(違
 
これにて第一回チキチキ新人作家アンソロバトル、終了になります。
またなにかやるかもしれませんので、お楽しみに!

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