川岸殴魚先生が書く、「オカリナ」ワールドッ!

2010年06月21日

「第3回チキチキ新人作家アンソロバトル」一番手は、「邪神大沼」シリーズでライトノベル業界に怪気炎をはきつづけている川岸殴魚先生! おかげで最近息切れ気味! 走れない!
 五感で感じたものすべてをお笑いに転化できるというその能力を使い、「オカリナ」を読者へキラーパスだ!
 では、川岸先生どうぞ!




「邪神大沼」の作者、川岸殴魚です。今回は、原田源五郎先生の非正統派異能バトル「今日もオカリナを吹く予定はない」を魔改造させていただきました!
 さて、僕は好きなキャラクターをコント仕立てにしたいというフェティッシュな欲望の持ち主なわけですが、そんな僕が「オカリナ」の中で好きなキャラと言えばもちろん井波!
 ちょっとシュールでマイペース、そして小柄でツルペタ。そんなキャラにちょっとベタ目のコントをさせれば……イヒヒヒ……井波なのに逆に……グフフ……ゲヘッ!
 ということでこんな感じにしてみました!
 コントしてる女の子って可愛いですよねっ! でも異論は認める!
「オカリナ」読者の皆様、もし気に入っていただければ「邪神大沼」シリーズもよろしくお願いします!




「エビマヨ君と井波さんの一升瓶実演販売!」(著/川岸殴魚)
※「今日もオカリナを吹く予定はない」シリーズ
(著/原田源五郎)より



○商店街のアーケード(日曜日・昼)
    人でごった返す商店街。行き交う人々の流れ。
    シャッターの下りた店の前で井波とエビマヨが長机を出している。
    長机には「実演販売! 職人特製一升瓶」と手書きされた紙が貼られている。
    多数の人目にさらされて不安そうな表情のエビマヨ。

エビマヨ「(小声で)井波、やっぱりやらなきゃいけないのか?」
  井波「一升瓶職人さんはね、今、大変なんだよ。跡継ぎだって見つからないんだから」
エビマヨ「それは以前聞いたけど……なんで俺たちが、せっかくの日曜日に一升瓶の実演販売などやらねばならんのだ」
  井波「エビマヨ君は冷血感だね。この一升瓶のおかげで死角と戦えるんだよ。そして職人さんはあんまり一升瓶が売れないから毎日お酒を浴びるように飲んでるんだよ」
エビマヨ「それは身体が心配だね」
  井波「そうなんだよ。毎日毎日、泣きながらフローズンダイキリを飲む日々だよ」
エビマヨ「案外オシャレな物飲んでるね。OLさんかよ」
  井波「職人さんがなにを飲んでも自由でしょ!」
エビマヨ「自由だけど……一升瓶職人だから日本酒かなって……」
     エビマヨはなおも食い下がろうとするが井波はエビマヨの言葉をすでに聞いていない。
     商店街を行き交う買い物客に向かって声をかけ始める。

  井波「皆さん。本日ご紹介させていただくのは、こちら、一升瓶です」
     テーブルの上には一升瓶。その脇に小さなサンプラー。
     井波が素早くサンプラーのボタンを押す。
     それに呼応して「オオー!」と歓声のSEが流れる。

エビマヨ「……」
  井波「エビマヨ君の番だよ」
エビマヨ「俺の番って?」
  井波「ほら、商品を過剰なほどに褒めそやして」
エビマヨ「……す、すばらしいフォルムですね……注ぎ口から胴へ至るこの美しい曲線。ひと目でただの一升瓶ではないことがわかりますね!」
     再びサンプラーのボタンを押す井波「ワハハハ」おばさんの笑い声が流れる。
エビマヨ「なぜ笑い声を流す!」
  井波「これからご紹介するのはただの一升瓶ではありません。職人さんがひとつ、ひとつ丁寧に作った特別な一升瓶なのです」
     井波、長机の下から新たに一升瓶を取り出す。
     サンプラーから再び「オオー!」と歓声。

エビマヨ「そっちが職人手作りかよ! 普通の一升瓶褒めちゃったよ!」
     長机に並ぶふたつの一升瓶。まったく同じで見分けがつかない。
  井波「ほらっ、エビマヨ君の番だよ。褒めそやして!」
エビマヨ「な、なるほど、こうしてならべて見ると、はっきりわかりますね。やはり職人さんが作った一升瓶は重厚で美術的価値すら感じますね」
  井波「さて、見た目ではまったく違いのわからないこの一升瓶ですが、触ってみれば違いは歴然なのです!」
     交互に一升瓶を触る井波。うんうんとうなずいて違いを確認する。
エビマヨ「おい、井波……俺のこと嫌いか?」
  井波「今は、ふたりの気持ちを確かめあってる場合じゃないんだよ。さあエビマヨ君も触って」
     井波に促されて一升瓶を触り比べるエビマヨ。違いがわからず微妙な表情。
エビマヨ「……確かに、職人さんが作った特製の一升瓶は触り心地が違いますね。なんというか、滑らかで温かみを感じるというか……」
     井波が再びサンプラーのボタンを押す。「ワハハハ」おばさんの笑い声が流れる。
エビマヨ「なぜ俺の時は笑い声なんだよ!」
  井波「それはエビマヨ君がボケるから」
エビマヨ「ボケてない!」
     井波はエビマヨとは目を合わせずに、粛々と進める。
     井波、今度はコンクリートブロックを机の下から取り出す。
     重そうに机の上へとブロックを置く。

  井波「さあ、ボケてばっかりのエビマヨ君。これはなんでしょうか?」
エビマヨ「……ブロックだね」
  井波「その通り! この丈夫そうなブロックに一升瓶を叩きつけるとどうなると思いますか?」
エビマヨ「……普通は割れるかな」
  井波「エビマヨ君、賢い! そうですね。普通はガラスで出来た一升瓶は割れてしまうのです。でもこの職人さん特製一升瓶なら大丈夫! 逆にブロックが粉々に砕けちゃうんでーす」
     井波、机の下から砕けたブロックを取り出し。机の上に上げる。
  井波「はい。これが砕いた後のブロックです」
     サンプラーから「オオー!」のSE。
エビマヨ「出来上がり登場! 実演しなくていいのかよ」
     井波、エビマヨの言葉に耳を貸さない。今度はトマトを取り出す。
  井波「続いては、このトマト。トマトって本当に切りにくいですよねー。でもこの特製一升瓶なら……」
     井波がトマトに一升瓶を振りおろす。
     グシャリ。
     グシャリ。
     鈍い音とともに無残につぶれるトマト。
     その滴る汁を悲しそうに見つめるエビマヨ。

エビマヨ「井波。まったく切れてないんだけど……」
  井波「はい。こちらが冷蔵庫で30分冷やしたものでーす」
     井波が机の下からきれいに盛りつけられたサラダを取り出す。
エビマヨ「むしろ冷蔵庫すげえ! その冷蔵庫欲しいわ!」
  井波「さらにこの油でベトベトの換気扇も」
     井波、換気扇を取り出し、一升瓶でガンガン殴りつける。
エビマヨ「油汚れ関係ないから」
     なおも一升瓶を換気扇に打ち付ける。
     ファンが千切れ飛び完全に破壊される換気扇。

  井波「そして、こちらが冷蔵庫で30分冷やしたものでーす」
     さらにもうひとつサラダを取り出す井波。
エビマヨ「換気扇もサラダに! 冷蔵庫マジック!」
  井波「……エビマヨ君、そろそろだよ」
エビマヨ「え?」
  井波「説明終わったよ。なにか聞くことがあるよね」
エビマヨ「もしかして……あれ?」
  井波「もちろん。あれだよ」
エビマヨ「…………でもお高いんでしょ?」
  井波「と・こ・ろ・が、なんと今回はっ! 特別価格98,000円でご提供します!」
エビマヨ「本当にお高い!」
  井波「しかもそれだけじゃありません。さらに今回ご購入いただけた方には特別にこちらの割れたブロックもおまけしちゃいまーす!」
エビマヨ「せめてサラダにしろよ!」
  井波「もしくは壊れた換気扇と割れたブロックのセットでも購入可能でーす」
エビマヨ「一升瓶なしかよ! あの皆さん。この一升瓶本当に丈夫で、いざという時には頼りになる武器にもなるんです。詳しくは言えませんが、この一升瓶のおかげで皆さんの寿命が守られているんです! 職人さんが一生懸命、心を込めて作ってます。職人さんを助けると思ってお願いします」
     商店街を行き交う人々に頭を下げるエビマヨ。
     その様子を真剣な表情で見つめる井波。
     井波がサンプラーに手を伸ばす。
     「ワハハハ」おばさんの笑い声が流れる。

エビマヨ「いいかげんにしろ!」




 テンション上がりぎみの川岸先生、パスが無回転っぽいカンジで変化してしまいましたが、無事届きましたでしょうか? 「オカリナ」はもちろん「邪神大沼」も、万人にオススメできる楽しい作品です! この笑いにピン!ときたら、書店へgo!! ブブゼラ、ブォ~♪


そして次回は、原田源五郎先生が登場です!
水曜日の更新をお楽しみに!!!

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