「スマガ②」発売記念特別企画!                下倉バイオ先生インタビュー!                  (聞き手/大樹連司先生:構成/ガガガ文庫編集部) 

2008年11月23日

こんにちは、編集部(m)でございます。
美少女ゲーム界の異端児、孤高かつ崇高なる世界観をひたすらに追求し続けるニトロプラス(私自身もファンであります…・・)が満を持して送る新作ゲーム『スマガ』!! を、ガガガ流に怒涛のノヴェライズ、2ヶ月連続刊行! いよいよ第2巻の発売であります! スタッフの皆様、お疲れ様でした……!

さて、無事2ヶ月連続刊行を記念いたしまして、『スマガ』の原作者である、ニトロプラスのシナリオライター下倉バイオ先生に、小説版の著者である大樹先生が突撃インタビューを行いました。
下倉バイオ先生といえば、ガガガ文庫初のニトロプラス・ノベライズ作品である『月光のカルネヴァーレ』(2007)の原作者でもあり、ガガガとは非常にゆかりの深いシナリオライターさんであります。

では、どうぞ。

大樹 まずは最初に、下倉さんの背景からお訊きしていいですか? 下倉さんは81年生まれ、偶然にもぼくとほとんど年が同じで、ニトロプラスでは一番若い世代ですよね。
下倉 そうなんです。『沙耶の唄』や『続・殺戮のジャンゴ』、それからガガガ文庫で『ブラック・ラグーン』のノヴェライズをやらせてもらった虚淵玄が72年生まれ、『斬魔大聖デモンベイン』の鋼屋ジンが76年生まれなので、ぼくとは、ちょうど5年ぐらいずつ違う感じなんですよ。
大樹 それぞれの作品をプレイすると、虚淵さんはアニメ、特にOVA世代で、鋼屋さんはネットでSS(二次創作小説)を書いていたらニトロプラスからスカウトがきた、というエピソードからもわかるように美少女ゲーム世代という感じがします。対して下倉さんは、むしろライトノベル世代なのかなと思いますがどうでしょう? 『スマガ』も美少女ゲームですが、ライトノベルのネタが非常に多い。
下倉 ですね。ちょうど中学生になって、何か小説でも読もうか、という時期に角川スニーカー文庫や富士見ファンタジアがすごく元気だったり、電撃文庫が創刊したりしていましたから。
大樹 ぼくもそんな感じでした。お好きな作家をお聞きしてもいいですか?
下倉 たとえば『イリヤの空、UFOの夏』の秋山瑞人さんだったり、『やみなべの陰謀』『大久保町の決闘』の田中哲弥さんだったり……文体に特徴のある作家さんが好きなので、そういう傾向にはかたよっている気はします。一番最初に読んだライトノベルも中村うさぎさんの『ゴクドーくん漫遊記』でしたから。一般の小説を書かれている方でも、『煙か土か食い物』、『九十九十九』の舞城王太郎さんとか、字の文が特徴的な方が好きなんですよ。
大樹 『スマガ』の異様に豊富な小ネタはそこに原点があるのでしょうか。一方で、文章自体は下倉さんの前作『月光のカルネヴァーレ』と比べ、意識的に平易で読みやすい文体にしていると思いましたが?
下倉 確かに今回の『スマガ』の主人公・うんこマン(仮)の場合は、「親しみやすく」「身近な感じで」「感情移入できるように」ということは意識して書きました。
大樹 最初にシナリオを拝読したときは、前作とまったく違っていたので驚きました。ところで、この『月光のカルネヴァーレ』でシナリオライターとしてデビューするきっかけは?
下倉 最初は、ニトロプラスで部分的にシナリオの補助を担当していまして、その流れで、「ここらで一本、作ってみない?」って話になったんですよね(笑)。そこで先輩である鋼屋と虚淵に相談するなかで「オートマタ(自動人形)」と「マフィア」という『カルネヴァーレ』の根幹を成すアイディアが出てきた。『月光のカルネヴァーレ』の根っこの部分はあのふたりが居なければ出てこなかった作品なんです。だから鋼屋と虚淵が導いてくれて、彼らにアドバイスをいただきながら作った作品である、という認識が、ぼくのなかにはあるんです。
大樹 なるほど。それに比べると『スマガ』は最初のコンセプトから下倉さんによるものだった?
下倉 そうですね。一番最初、作品全体の大枠から、ぼくとディレクターと原画家で一緒に作って……だから、「好き勝手やらせてもらったなあ」という感じなんです(笑)。
大樹 『スマガ』は、シナリオの下倉さん、原画の津路参汰さんをはじめ、「ニトロプラスの新世代が作るゲーム」で、これまでのニトロとは違う作品というアピールをされていましたよね?
下倉 あまりブランドのカラーに迎合しすぎても「それ以上のもの」はできないなあ、というのが、個人的な思いとしてありました。もちろん、前作の『月光のカルネヴァーレ』も、納得のできるクオリティを達成したという自負はあったのですが、プラスαの部分で、もうちょっと好き放題やってみたい、独自色を追求したいという思いがわきまして。振り返ってみると、それが、ぼく個人にとっての「スマガ」の出発点だったような気がします。
大樹 それで「ニトロプラス初の恋愛アドヴェンチャー」という、まあ――壮大な……ウソというか何というか(笑)。
下倉 (笑)すみません。いつもウソをついてばっかりで。
大樹 いえ、完全にウソではないですよね。怪獣とか出てくるし、主人公は死んで生き返ってまた死んでの繰り返しだったりしますが、ちゃんと恋愛している。最初から「ラブコメでいこう」という意識はあったんですか?
下倉 そうですね。そこがひとつ、今作の大きなチャレンジだったことは確かです。
大樹 小説版では、日常パートをはじめ学園ラブコメ部分はだいぶ削らざるを得なかったので、ちょっと申し訳ない感じで……。
下倉 いえいえ。作品の要所をきっちり把握してもらえていて、読んでいて「これは正しいノヴェライズだ!」と思いました(笑)。
大樹 ありがとうございます。さて、その「好き勝手」として、主人公が何度も同じ時間を繰り返す「ループもの」、そして秋山瑞人さんの『イリヤ』などに代表される、主人公とヒロインの関係が世界の運命を決定する「セカイ系」というテーマを下倉さんが選んだ理由はなんでしょう?
下倉 反応を見るとユーザーさんそれぞれでいろいろな読み解き方をされていて、それはそれですごく嬉しいのですが、最初の出発点は……佐藤順一さんのアニメ作品『プリンセス・チュチュ』を、ある日、なんの気なしにふっと観たことがきっかけだったんです・・・・・・カテゴライズとしては子供向け変身少女アニメなんですけども。ガチでメタな作品だったんですよね。
大樹 ええ。かなり実験的な作品ですよね。
下倉 それを観て「へえ、子供向けでも、こんなメタなことをやってもいいんだ!」って思って、それがものすごく心に残っていて……。そういう意味では、『スマガ』の「ループ展開」というのは、確かに要素としてわかりやすい部分ではあるんですけども、むしろ書いているときのモチベーションとしては「作者的な、物語の都合的な事情にふりまわされるヒロインを、なんとかして救うことはできないのか」というテーマをメインに作った作品なんです。
大樹 前作『月光のカルネヴァーレ』は架空世界の設定や歴史を精緻に考証してひとつの箱庭を作り、そのなかで生きる人々や起こる事件にスポットをあてた作品だったと思います。対して『スマガ』は箱庭の成り立ち自体を問う、そして最終的には箱庭自体をぶっ壊していくメタフィクショナルな物語で、作り方としては対極だと思うのですが、ご苦労はされませんでしたか?
下倉 ぼく個人としては、「アイディアとストーリーで、どう読者の心を揺さぶるか」ということにもっとも興味があるわけで。単純に、いかに主人公の気持ちに感情移入させるか、ということを追求していった先に、このような構造が仕上がった、というだけなんです。つまり、ぼくのなかでは、「ループもの」というくくりよりはむしろ、「シンプルな恋愛ストーリーとしてまとめたい」という思いのほうが実は大きかったんです。
大樹 なるほど。「ループもの」には、色々と先行作品があり、たとえばガガガ文庫でも活躍されている田中ロミオさんのFlyingShine『CROSS†CHANNEL』などが有名です。これらの作品だと、主人公はループを繰り返すうちにどんどん物事を上から見るようになり、作中キャラクターと対等な恋愛ができなくなっていく。そこで『スマガ』が面白いのは、そして独特なのは、結局、最後までうんこマン(仮)がキャラクターとの恋愛を諦めないところですよね。
下倉 そうですね。「現実」と「つくられたセカイ」が等価値であるような話にしたかった。『スマガ』における「ループ」は、そのために便宜上作った装置に過ぎないんですよ。とにかく最後は「無茶を通して、ハッピーエンドを勝ち取ってやるぜ!」っていう物語なんで(笑)。うんこマン(仮)も「つくられたセカイを捨てて現実に戻る」みたいな思考回路にはしたくはなかった……。結局最後はメタ視点にいっちゃう話ではあるんですが、各ヒロインがみんな幸せになれるエンディングにしたかったんです。
大樹 しかし、そのためにはさまざまな困難が……それが今回の『スマガ』2巻で描かれるガーネット編ですよね。メタ視点をもってしまったがゆえの恋愛の困難さが出まくっている。全シナリオ通じて、うんこマン(仮)が一番酷い目にあうし、酷いこともするルートだと思います。ノヴェライズ中も苦しく一度、寝込んだぐらいで……こんなこと言うと皆さんが買ってくれないんじゃないかと不安ですが(笑)。
下倉 それは……。でも、すごくこの2巻は良かったですね。果たして大樹さんは冒頭からどこまでガーネットの鬱展開でひっぱるのか(笑)、読んでいて、ぼく個人としてもすごく楽しめましたよ。
大樹 そう言っていただけると助かります。今巻のヒロイン・ガーネットは、いろいろと可哀想な子で、なんというか、本当の意味で悲劇のヒロインで……読者の皆さんもそこを楽しんでいただけたら……楽しんでいただけるのかな? 不憫だなぁ……ガーネット。
下倉 不憫ですよね……。でもまあ、小説版は、不憫なところを活かして当初のテーマとはぶれないかたちにしっかり仕上がっていると思いました。本編について頂いたユーザーさんの感想も「物語としては、ガーネットルートが一番おもしろかった」という意見は多いみたいですし、なんだかんだ言って、みんな、楽しんでいただける内容になっていると思います。原作ともども、小説版もよろしくお願いします。
大樹 今日は、お忙しい中、本当にありがとうございました!
       *

うんこマン(仮)のさらなるリベンジ! 今度こそ天才魔女スピカと最高のハッピーエンドを! と思いきや……運命の歯車は、ああ、またしても予想だにしない展開を……?????

1巻を読んで面白かったひとも、「あれ?」と思ったひとも……みんな買ってください! きっとご満足いただける内容になっております。どうぞよろしくお願いいたします!

一冊でも多くのひとが手にとっていただけることを祈りつつ……。

ガガガ文庫「スマガ①」「スマガ②」ただいま絶賛発売中です!

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