『めいたん』まえがき

2007年08月15日

どうもです。最近やたらと暑いですね。みなさま、お身体の調子はいかがでしょうか。
ガガガ文庫、8月刊の発売日が迫って参りました(今月の発売日は17日ですよ)。
『天元突破グレンラガン』のノベライズを含む(ちなみに『グレン』は公式ムックも同日発売ですので合わせてお買い求めください!!!)全5冊です。よろしくお願いします。

で、ですね、その8月刊行分のうちの1冊となる『めいたん メイドVS名探偵』でデビューする樺薫(かんば・かおる)氏に作品のイントロダクションとなる「まえがき」を書いていただきました。
こいつ誰? ですとか、なんか気になるタイトルだけどどういう作品なんだろう? とお思いの方々(あるいはまったく興味ない方も)、「まえがき」をお読みいただきまして、実際に本を手に取っていただければ、僕も樺氏も嬉しいです。明日から2回にわたって、樺氏のメールインタビューもお届けする予定です。

作中に登場する「メイド道徳」の生みの親・シゾウ夫人の正体がここで明らかに!
……では、お読みくださいー。
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 はじめまして。樺薫と申します。
 
 このたび、ガガガ文庫からお声掛けをいただき、こうして『めいたん メイドvs名探偵』を上梓させていただける運びとなりました。ちなみにこのタイトルは編集の山田氏によるもので、私が提案した『メイドVS名探偵 史上最大の戦い』は即座に却下されました、正解だと思いました。
 
 さて。
 
 この小説は、19世紀には女性の社会進出の大部分を占めていた家事労働者が、1920年代以降には激減していった、という歴史的な事実に着想しています。
 
 第一次世界大戦、アメリカに明確に世界の覇権が移った、あの、世界が経験した最初の総力戦のあと、戦勝国とはいえ多大な犠牲を払ったイギリスで、ひっそりと姿を消していく、家事使用人というトライブ。
 
 時代の影に消えていくトライブ!
 
 でらろまんてぃっく!
 
 そこで、ヴィクトリア朝ではなく、ジョージ5世統治下のイギリスを舞台にメイドの活躍を描く、という結構ありそうでない感じの舞台設定になりました。
 
 さて、19世紀までは有効だったものの20世紀へ向けて有効性を失い、消えていったトライブ、と言えば、我が国の武士がまさにそれ、なわけでして、これとこれはうまいこと悪魔合体させられんじゃねえかな、と思いついたのが運のつき。まるで知識のない1930年代イギリスを舞台に小説を書く苦労を背負い込むハメになりました。その苦労が見事に作品に結実した、かどうかは、読者の皆様に判断していただきたく。頑張りました。
 
 そんなメイドと重ねあわされる武士ですが、生半の武士では説得力がありません。誰がいいだろう、と考えた時、イギリスって薩長側の援助をしていたわけだから、幕府軍としてはヴィクトリア女王の一人も暗殺しておきたいよなあ、などということを思いついてしまいました。そう思ってみれば、いるじゃないですか、五稜郭の幕府軍に、暗殺なれした一流の剣士、誰よりも武士らしくあろうとしたリアルラストサムライが!
 
 土方歳三が!
 
 そんなわけで、実は女だった土方歳三に、イギリスへ密航して、メイド道を完成させてもらいました。
 
 しかし、メイドと武士という滅び行くトライブのイメージを重ね合わせるだけでは、ちと弱い。なんとなれば、メイドがメイドである以上お屋敷で働きはするわけですし、それではヴィクトリア朝のメイドを描いたのと大して変わりはしないということになってしまいます。
 
 そこで、20世紀的な輩に出てきてもらってこれと対比してやるのはどうだろう、と思い立ちました。戦間期に勃興した、20世紀的な文芸形式、といえば、本格探偵小説に他ならないでしょう。
 
 かくて、新撰組の道統を汲むメイドさんとアメリカ帰りのタフな名探偵がイギリスの片田舎のお屋敷でイヤミを言い合う、というなんとも言いがたいこの小説が出来上がりました。
 
 ところで、この時期のイギリスでは、それぞれ宇宙開発とコンピュータサイエンスに多大な概念的な貢献をする事になる後の偉大な知性が、その多感な少年時代を送っておりました。そこで、メイドさんをその片方の家に押し込んでみました。
 
 実はこの二人にはその20世紀的な学問領域への概念的な貢献以外にひとつ共通点があって、この共通点が小説の根幹のネタに関わってきます。この二人の関係が大きく変化する箇所は、この小説の最大の読みどころかと思います。
 
 と言いますか、何故か一番ノリノリで書きました。
 
 傑作かどうかはさておき、ちょっと他にない感じの小説に仕上がっている感触を作者としては抱いております。
 
 よろしくご笑覧ください。

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