

編集A:実は今回、ライトノベル大賞の選考方法を考えたとき、「外部選考委員なし」という選択肢もありました。そんな中で、どうして外の方に選考をお願いすることに決めたかというと、それは編集者の視点というのは、どうしても落としどころを考えながら読んでしまう傾向があるからなんですよ。ここを直せば売り物になるなとか、作品と商品として判断してしまいがちになる。もちろん、本にしてみんなに読ませたいと思える原稿を求めているわけですから、そういう視点もハズせませんが。でも、それだけでは新しい可能性を見逃してしまうかもしれないんです。大賞は文庫創刊前にみなさんと繋がりが持てるチャンス。それを最大限に生かすためには、僕らとは違う視点で見てくださる方が必要なんですよ。選考委員さんには、編集者とは違う方向から見て「こいつ、なんか面白いな」というのをキャッチしていただけたらと思っています。
佐藤:アンテナの角度は広い方がいいですもんね。で、「あとはオレたちがなんとかするぜ!」ってことなんですかね。
編集A:そうです。それに最終選考へいく前に編集者も読みますし、今回は森本さんも仲俣さんも、全作品読むと言ってくださってますし。いろいろな角度から選考していきたいと思う。
仲俣:宝探しのオモシロさがなかったら、選考委員をやっても面白くないですよね。最終選考に残った数本を読むだけでは、その面白さはない。応募作を自分の手で封筒から出して、読んでみたらとんでもない作品だった、みたいな展開を、やっぱり期待したいじゃないですか。
佐藤:この世界で最初の読者になりますもんね、友だちとかを除いたら。確かに、うちの会社に送られてくるデモテープなんかを見ていても、宛名の書き方とか封筒の閉じ方ひとつに送った人のキャラが滲みでてる。作品そのものに加えて、そういう部分の印象もけっこう残ってたりするんですよね。人との出会いを求めているガガガ文庫には、ここをチェックするのは必要な行程かも知れない。
仲俣:おそらく下読みをお願いする方たちは手分けして読むことになるでしょうけど、僕らは応募作全部に目を通すわけですからね。でも、さすがに多くの作品に接していくとなると、タイトルの段階で強くアピールする作品にやっぱり目が行きます。ぱっと見て、ぐっと心を掴まれるようなタイトルってありますから。僕はイラストには萌えないけど、タイトル萌えというのはありますよ(笑)。実際に本にするときに変更されることも多いと思うけど、タイトルによって作品の印象が違ってくるのは確かなので、書く側にもそこには、一種のプロデュース能力が必要となってくる。同様に、ペンネームにも、気を遣ってほしいです。
佐藤:イラスト買いもありますが、タイトル買い、ペンネーム買いも確かにありますもんね。日日日(あきら)さんのペンネームも、字面のヴィジュアルだけでも、すごくインパクトありましたよね。
佐藤:ここまでいろいろと言ってますけど、あくまでもヒントというか、こんな例もありますよということを言ってるわけですよね。よく誤解されるんですけど、この通りにしろとか、これが正しいとか、言ってるわけでもなんでもない。やり方や考え方なんて人それぞれだもの。でも、人の言葉を極端に捉えて必要以上に安心したり、怒ったりする人が最近多いですよね。ってこれは、このトークを読んでる人、聞いてる人のことを言ってるんじゃなくって、もっと広く日本全体を見たときにそう思うんですけど。
編集C:発言された言葉なんてのはすべて途中経過ですからね。
佐藤:確かにそうだけど、そう言っちゃうと身も蓋もないな(笑)。
編集A:ただ、大賞のことに関して言えば、読む側は何百本何千本のうちの1つとして見ますけど、送る側にしてみれば世界でひとつの大切な作品となるので、余計なことも含めていろいろ考えてしまう必死さはわかりますよ。当たり前のことですが、ひとつひとつを大切に受け取らないとなりませんよね。
編集C:提示された何かに対して「自分は違うと思う考えだ」と思うことは、良いことだと思いますよ。いろいろな考えがあるし、既存の考えなんてどんどん超えてくれた方がいいんだし。でも、できればそれは作品で表現してほしいとは思う。
佐藤:僕みたいなのがとやかく言ったりしていると、まあ、目障りなのもわかるんですよ。そうやって風当たりが強くなるのも覚悟の上でやってますし。でも、それでも、何か新しいことができるんじゃないかと期待して、試行錯誤を重ねているわけです。でなかったら、こんな面倒な立場になんて誰も立ちたがらないよ。だから、そういう姿勢自体に関しては、どうか信用していただきたい、と思う。
編集B:でないと、ガガガトークを連載したり、ムックを出してみたり、創刊前の何もない状態から動いたりしてること自体も、何のためにやってんだってことになってしまいますからね。
佐藤:逆に言えば、その部分を信用できないと思うのだったら、僕らのところにコミットしてくる必要はないんじゃないか——なんて、僕が言ってしまうのは、言い過ぎかもしれないんですけど——でも、たぶんね、そういう根っこの部分で重ならないんだとしたら、良い悪いじゃなくて単純に「合わない」と思うんですよ。ここまでの話にも出たとおり、僕らはまず人として付き合いたいと思っているのだし。
佐藤:葛藤とかダブルスタンダードな意見も含めて、すごくストレートなガガガ編集部からの現状報告という感じになりましたね。どんな形であれ、ここへ関わるってことにオモシロさを感じてもらえれば幸いです。思うところがあった方は、まずはライトノベル大賞に応募することでアクションを起こしていただければと思います。
仲俣:僕らは、応募された作品を「審査してやろう」と思ってるわけじゃなくて、ただ読みたいんですよ、おもしろい小説を。今回、選考委員をお引き受けした理由も、いままでにない良い作品をいち早く読みたい、見つけたいという思いだけです。だから、選考にあたっては、他の選考委員や編集部員が良いと言わなくても、自分にとって何かひっかかるものがあれば積極的に押したいです。
森本:僕も、自分だってみんなと同じように唸りながら作品を作ってる立場なわけだから、ほんとは選考委員なんてやってる場合じゃないんですよね。外からもいろいろ言われたりすることもありますし。
佐藤:みんな、ちょっとずつグチが入りますね(笑)。
森本:でも、そうやって出会う作品の中に、自分にとって特別なもの、化学反応を起こしてくれそうなものがあるんじゃないかって期待しちゃうから、若い人の作品にはどうしても触れたくなってしまう。何と言われようと、そういうものと出会いたいと願っている自分がここにいるんですよ。新しい文法とか、視点とか、そういう発見がある作品を見つけられたらなあ、と思っています。
佐藤:編集部のみなさんはどうですか?
編集A:えーと。まず、応募作にはあらすじをつけていただいているのですが、このあらすじが曲者で、あらすじを最後まで書いていない方がけっこういらっしゃいます。
佐藤:そういうインフォメーションかよ(笑)。プロットの終わりが「果たしてどうなるのか——!?」ではダメですよということですよね。
編集A:そうです。あらすじは、最後まで書きましょう。本の裏に載っている「あらすじ」とは別のものです。ちゃんとネタをバラして書いてくださいね。
編集B:ホームルームみたいだなあ。
編集D:とりあえず、変にちっちゃくならないで書いてほしいですね。選考委員にこう読まれたいとか、そういうことはあまり考えないで書いてもらいたいです。どうせならば、その先の読者へ向かって書いてもらえたら、いいんじゃないかと思います。そういう作品をお待ちしています!
編集C:僕は、女の子のうなじがキレイだとか、ワイシャツの胸の感じが良いとか、そういう自分の萌えの部分をさらけ出してほしい。そういうのって、人に言うのは恥ずかしいことだけど… でも、作品ではみんな“全裸モになるべきだと思うんです。そうです、“全裸小説モこそが、人を感動させる力を持ってるんですよ! ──もちろん秘密は厳守します。
佐藤:文庫にしようとしてる人が何言ってんだ(笑)!
編集A:このように、編集部にはとっても変わった人もいますけど、まともな人間ももちろんいますので、どうか心配しないで送ってきてほしいです。本当にいろいろなタイプの人間が選考に関わっているので、少なくともその誰かひとりには伝わるだろうと信じて、送っていただけたら良いと思います。ブギーポップやハルヒも新人賞から出てきた作品ですが、それまでにあったライトノベルの地図を鮮やかに塗り替えましたよね。ひとつの作品がそれだけの力を持ち得るのがライトノベルです。そのくらいの高い志を持って、臨んでいただければ本望です。
編集B:選考委員の方々や、ずっと一緒にやってきてくれている大さん、それからガガガトークに参加してくださったゲストのみなさん、それぞれの繋がりを含めて、ガガガ文庫編集部の魅力だと思っていただければ嬉しいです。前例のないようなものでも受け止めていく懐の深さはあると自負しているし、そこは安心して飛び飛んでもらえたらと思う。作品を書いて応募するっていうことが、この祭に参加するチケットのひとつなんですよ。仮に今回は賞を取れなくても、これから一緒に作品仕込んでみない?という話には十分なり得ます。今後も付き合っていくためにも、全力投球の作品をお待ちしています!

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1959年生まれ。アニメーション監督。大友克洋監督「AKIRA」の作画監督を経て、監督となる。ケンイシイのPV「EXTRA」で描いた独自のサイバーSFが国内外のアーティストから注目を集め、GLAYや宇多田ヒカルのPVまでを手がける。03年には「アニマトリックス」の「Beyond」がハリウッドで絶賛されるなど、世界がその才能に注視する映像作家。そのほかの代表作に「彼女の想い出」「音響生命体ノイズマン」「永久家族」などがある。

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1964年東京生まれ。フリー編集者、評論家。情報誌やデジタルカルチャー誌の編集者を経て、純文学からエンタテインメントにいたる現代文学、インターネット文化などの同時代の表現を幅広く論じる文筆活動に入る。著書『ポスト・ムラカミの日本文学』、『極西文学論 Westway to the World』、『〈ことば〉の仕事』ほか。
そんなわけで、普段とはまったく違うガガガトークとなりました。ガガガ編集部やその他このプロジェクトに関わっている人たちは、いろいろなキャラクターの人が揃っています。編集部の中の人の声や、選考委員が選考委員になりたいと思った理由など、いろいろわかったこともあったと思いますが、僕がいちばん伝えたかったことと言えば、「なんか楽しそうじゃね?」ってことだったりします。もちろん、真剣だからこその楽しさです。今回のトークで、少しでもそれを感じてもらえたなら、嬉しいなと思いました。
2006年09月22日
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