大槻ケンヂ×劇団ひとり写真(大槻ケンヂ×劇団ひとり×佐藤大)書いているその時だけ人は作家になる!

佐藤大:大槻ケンヂさんも劇団ひとりさんも、他の仕事をされながら小説を書かれた方です。小説の賞って、学生を除けば何か別の仕事を持つ人が書いて応募するものですよね。そういうこともあって今日はおふたりに来ていただきました。大槻さんとひとりさんは、以前にも一度対談されているそうで。

劇団ひとり:ちょうど春が訪れたころのことですね。

大槻ケンヂ:そのころ『陰日向に咲く』25万部突破と言ってたけど。

劇団:45万いきました。

佐藤:いきなり部数の話ですか! ドロッとしてますね(笑)。

劇団:ドロッとしてないですよ。サラッと言いましたよ。サラッと45です。

佐藤:ちなみに、そのときは初対面?

劇団:ええ。僕が大槻さんの本を何冊か読んでいて、お会いしたいということで。『陰日向』の帯も書いてもらいました。

大槻:僕はもちろんテレビでも見ていましたけどね。僕、帯だけだったらすごい数書いていますよ。

劇団:帯効果で、どのぐらい売れたか数えてみたいですね。

大槻:帯も印税制にしたいよね。たまに『陰日向』みたいにドンといくのがあるからね。

劇団:今、帯で買う人がすごく多いらしいですもんね。印税制にしたほうがいいです。0.5%くらい。

佐藤:すごいリアルな数字を出さないでくださいよ(笑)。さて、まずお伺いしますが、いわゆる文庫本というものに対して何か思い入れはありますか?

劇団:僕は、ぜんぜん本を読まないで生きてきたんですけど、18のときに初めて自分で文庫を買いまして。地元ではみんなやんちゃだったんで、そこで本なんか読んじゃったら、かっこいいんじゃないかと思ったんですよね。近くの古本屋で、100円なのに妙に分厚かった井上ひさしさんの『ドン松五郎の生活』。これはお得だなと。

大槻:ドン松だ!

劇団:それが初めて手にとった文庫です。

大槻:僕は、小学5年生ぐらいのときに角川文庫ブームがあったんだよね。ちょっと早熟だったから、横溝正史を読んだ。『獄門島』とか『犬神家の一族』とか『三つ首塔』とか。

劇団:そんなの小5で読めるもんなんですか。

大槻:いや、よくわからなかった。なかでもわからなかったのは、松本清張の『アムステルダム運河殺人事件』というやつ(笑)。でも、わからないながら最後まで読むんだよね。そのころ住んでたのが高円寺付近だったんだけど、町に古本屋がたくさんあった。その風景を見ながら育ったので、なんとなく本っていいなと思っていたんですね。森村誠一の『人間の証明』もそんな感じで入手した記憶が。で、その後、星新一や筒井康隆を読むようになりましたね。ハヤカワ文庫SFも好きだったな。ハインラインの『夏への扉』とか。

いまだに何もわかっていない/今はもう恥ずかしくて

佐藤:それぞれ音楽にお笑いと、活動のメインは別のところにあったわけですけど、どうして小説を書くことになったんですか。

大槻:15年ぐらい前、『月刊カドカワ』という雑誌でミュージシャンに本を書かせようという動きがあったんですよ。それに、僕も駆り出されたわけです。

劇団:僕の場合は、鉄拳やヒロシのネタを集めた本が売れていた時期に、劇団ひとりさんもどうですかと声がかかったんですよ。もともとは小説じゃなくて、なにかネタ系の本をつくろうとしてたんです。でも書いていくうちに膨らんじゃって、編集の人が「これは小説にした方がいいんじゃないか」と言いだして。

大槻:僕も帯コメントを頼まれたとき、はじめはネタ本みたいなものだと思っていました。開いてみたら小説だったので、びっくり。

劇団:普段やっているコントに近いものを、文字に起こしていったら、なぜかああなっちゃったんです。

佐藤:『陰日向』には浮浪者の方が野生の匂いがするという話がありますけど、「自由の匂いがする」というのが、舞台でやってらしたネタの中にも入ってますよね。しかし、ということは、お二人の作家デビューの経緯は似てますよね。ミュージシャンの本を出すことが流行っていた時期、芸人さんの本を出すことが流行っていた時期、それぞれ時代に乗せられたかたちで才能を引っ張り出された、という。

劇団:でも、たぶん大槻さんには昔から書きたいという欲求があったんじゃないですか。子供のときからずっと本が好きだったわけだし。

大槻:うん、あった。小学二年生のときに、バラバラ殺人事件をテーマにした小説を書いて親に見せたこともあったよ。でも、いっぱい赤を入れられた。母親に校正された(笑)。

佐藤:あちゃ、子供の夢を摘むようなことを。

大槻:ショックでしたよ。ほんとに。母ちゃん、ひでえよ! 

劇団:読んでみたいな、それ。

佐藤:それで、その後、第二稿を提出したんですか?

大槻:書くわけないでしょう!

佐藤:ですよね(笑)。じゃあ、『月カド』で書いてくださいと言われたときには「待ってました!」みたいな感じですか。

大槻:いや、そのころの小説を書くことに対するイメージって、今より断然敷居が高かったでしょう。まだ、作家と出版社と折半で出版して一般の流通で流す、新風舎とか文芸社みたいなところもなかったし。小説を素人が書いていい雰囲気じゃなかった。やっぱり、小説家っていったらさ、田舎から出てきて四畳半一間に住んで、ミカン箱の上で三年書いたりしないといけないような気がしてたから。

劇団:そういうイメージ、僕には今でもありますね。じゃあ、あれは、あるんですかね? 編集の人が横で正座して待ってて、一枚ずつ持っていく、みたいな。そういう経験、一回ぐらいしたかったんですけど。

大槻:だって、今はメールで送っちゃうからさ。

劇団:そうか!

佐藤:おふたりとも、デビュー作を書き終えたときに手応えはあったんですか。どちらの作品も、ご自身のイメージに合った仕上がりになっていますよね。フィクションなのに、書いている人間のパーソナリティがしっかり感じられる。まあ、それは僕らが勝手につくりあげてるイメージなのかもしれないですけど。

劇団:手応えがどうとかって、正直なところ、僕はいまだに何もわかっていないです。何がきっかけで思いついたのかとか、キャラクター先行なのか、設定先行なのか… ぜんぜんわかんないんです。それはネタづくりにしてもそうだし、小説でもそうです。一体どこからきたんでしょうね。ネタ帳も小説とほとんど変わらない感じで書いてたんですけどね。

佐藤:『陰日向』では短編それぞれが少しずつリンクしてる構造になってますけど、これは最初から狙ったんですか。

劇団:それはですね、二本目を書いてるときに思いついて、ちょこっと一本目とつなげてみたんです。そしたら、もう全部つなげなきゃいけないような義務感が芽生えて。

佐藤:自分の中にルールができたんですね。

大槻:すごいですね。僕なんて、本の書き方がわからなかったから、スケッチブックにガーッと書いてましたよ。それで、1文字目が「僕」だったんだけど、それが誤字だったんだよね。字が間違ってた。はじめの1文字目が書けなかったという(笑)。

佐藤:ワープロとかじゃなかったんですね。

大槻:おれ、いまだにワープロじゃないんですよ。でも、やっぱり最初はわからないでしょう。暗中模索状態。一番最初に書いたものはみんな必死なわけだから、どうしたって自分っぽさが出ちゃうんじゃないですか。だから今はもう恥ずかしくて『新興宗教オモイデ教』は正視できないですね。

佐藤:そうなんですか。

大槻:単行本が出たあと、しばらくして文庫になるでしょう。そのときゲラを読み返さなくちゃいけないわけだけど、ほんと恥ずかしくて死にたくなったもんね。オレ、直しちゃうときは、まったく違う話になっちゃうぐらい手を入れますしね。50枚の短編だったのが、8枚のショート・ショートになっちゃったこともある(笑)。

物を書くエナジー/セレブ・カンヅメだったら

劇団:そういえば、カンヅメも憧れてたんですよね〜。1回だけ編集の人に、「カンヅメもありますけど、どうしますか?」みたいなこと訊かれて、ほう、こんな感じなのか、と思いましたけど。

大槻:いいホテル泊めてもらいました?

劇団:いや。だって、どこでですか、って訊いたら、幻冬舎の会議室だって言うんですよ。絶対ヤだよ、そんなのと思って。だから、セレブ・カンヅメだったらいくらでもやりますけどって言ったんですけど、「あ、それはちょっと無理です」みたいな。

大槻:おれ、この間、ある雑誌で連載を始めたのね、小説の。そうしたら契約書を交わしましょう、ときた。えっ、本を書くのに契約書が必要なんですかって、びっくりしたんだけど。覚書から何からきっちりあるやつでね、それでハンコを押したのよ。ホテルを使えるのは何々で〜みたいなことも書いてあった。

佐藤:すげえ! 僕は脚本書くのがメインですけど、そんな経験、ないですねえ。

大槻:脚本だと脚本化権とかはありますもんね? 本を脚本化していいですかという段階での契約がある。

佐藤:ありますね。

劇団:へー。

大槻:脚本化していいですかというのがまずあって。それでサインをすると、たとえ映画制作がポシャったりしても、前期・後期でお金が入ってくるの。

劇団:何ぃ? 

大槻:あらあらあらあら。知らないんだ。そういうの、大切ですよ! 昔、芸人さんが歌出して、ボンと売れちゃった時期があったじゃない。漫才ブーム。そのときに、ザ・ぼんちさんが『恋のぼんちシート』が80万枚売れたんだけど、(お金を)全然もらえなかったらしいのね。それを、芸人として呼ばれた吉田拓郎の番組で、思いのたけをぶっちゃけたのよ、生放送で。その曲はフォーライフから出してたんだけど、吉田拓郎はフォーライフ設立メンバーの偉い人なわけ。そうしたら、吉田拓郎が「おれが言っとく」ってことになって、それからもらえるようになったらしいよ。だから、こういう場でぜひ言っとくべき(笑)。

劇団:というか、僕にはまだ、印税すら… いや、うん。まあ、うちは事務所がそういうのはこっちに任せておけと言っておりますので。

大槻:ちなみに月給制とか?

劇団:ぶ、歩合制です。

大槻:そう。ああ、そう(笑)。まあまあ、いろいろありますよ。

佐藤:ありますね(笑)。

劇団:でも、大好きな事務所ですから!

大槻:何なの、その変なフォローは。でも、そういう世知辛さみたいなのが、物を書くエナジーになるんですよよ。

劇団:なるのかな? なればいいんですけど。

大槻:やっぱり、本を書いてお金儲かっちゃダメなんだよ。だいたい、もし、ミカン箱で書いてるような人がいたら、劇団ひとりなんて、今ごろ、完全に恨まれているよ。

劇団:そうですよね。芸人で言ったら、突然わけのわからないやつが出てきてM1で優勝しちゃった、みたいなものですもんね… うわ、これは謙虚にいかなきゃダメですね。 

以下、次へ続く!

大槻ケンヂ大槻ケンヂ
1966年生まれ。東京都出身。ミュージシャン、作家。82年にバンド「筋肉少女帯」を結成、インディーズレーベルのナゴムレコードで活動する。88年にアルバム『仏陀L』でメジャーデビューし、人気を博す。脱退後、2000年に「特撮」を結成。作家としては、94年に「くるぐる使い」、95年に「のの子の復讐ジクジク」で2年連続「星雲賞」を受賞。著作多数。最新作品は『ロコ!思うままに』(光文社)。

劇団ひとり劇団ひとり
1977年生まれ。千葉県出身。タレント、作家。パイロットである父の仕事の都合で少年期の一時期をアラスカで過ごす。94年、お笑いコンビスープレックスを結成し、太田プロライブに出演。2000年、相方の失踪によりピン芸人「劇団ひとり」となる。2004年には銀座小劇場にて初の単独ライブを行い、ソロDVD『都会のナポレオン』をリリース。その後、テレビドラマ『電車男』(CX系)『純情きらり』(NHK)、映画『嫌われ松子の一生』などに出演。



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2006年08月04日

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