冲方丁×神山健治(4)写真(冲方丁×神山健治×佐藤大) 理由なき創造を続けるシステムに戦いを挑め!!!!

神山:「ものづくりが趣味です」とか言いつつ「でもひとつも作品を創り上げたことはありあせん」って人よくいるじゃないですか。じゃあ、なんででものづくりに興味をもったのかというと、クリエイターを見てるとアレになりたい!って思うみたいなのね。

冲方:なってから来てよ、っていう(笑)。

神山:アニメにしても漫画にしても小説にしても、今って、いろいろ学校もあるわけじゃないですか。でも学校を卒業してもなお、そこを通過してないわけですよ。漫画を一度も脱稿したことないのに、漫画家になりたいとか言っちゃう感じね。でもね、「部活もやったことないですが、プロ野球選手になります。バットとグローブはこれから買います」みたいなことはスポーツ界だったらありえないように、こっちも本来ありえないことなんだけどねえ。
しかし、これっていうのは、もはや創作する根拠があったから作家になった、ということでもなくなりつつあるってことでしょう。いよいよ意味わからなくなってくるよね? なんかもう、とりあえず世の中に活字を垂れ流さなければならないんで、そのシステムに乗っかる人間をさらってこい、みたいな話になってきますよね。

冲方:(爆笑)。

神山:絵の方に片足突っ込んでる立場からいわせてもらうと、けっこうね、絵を描いてる方も、何書いて良いかわかんないんです。もはや、純粋にクリエイト行為に加担したいって思ってる人間は、そんなにいないと思う。でもクリエイトし続けなくちゃならない経済構造に、今の時代がなってきてるんだと思うよ。
ハリウッドだって、すごい映像をつくるための便宜上として脚本があるんだよ? あのすごいインフラを使い続けなければならないから、物語を捻り出してるわけで。だから、どんどん過去の作品を焼き直したりしてるわけででしょう。

冲方:そうか、モチベーションって、そもともそんなにないのか!

佐藤:なんか… すごい話になってきましたねえ。でも、プロまでのハードルっていうのは、下がってきてますよね。反面、続けるハードルっていうのは上がってきてるわけですが。

神山:明日からアニメーターになりたいって急に言い出すバカは少ないけど、明日から脚本家になりたいってい言い出すヤツはいる。字はみんな書けるし、PCだったら漢字かけなくても知らない字までまでバッチリ打てるわけですよ。つまり手段としてのハードルが低い。そこんとこが、冲方さんの言ってたクオリティ判断が付きにくいことの一因でもあるよね。

佐藤:それに抗うには、やっぱりフィジカルだと思う。誰しも煮詰まることはあるわけだけど、そこを突発するには、人と面と向かって話すとか、外の世界の刺激を受けるとか、そういうことが大事。他のクリエイターさんと話してても、みんなそういうことがキッカケになったと言っていて。なんとなく、ここ数年で時代の流れもメンタルからフィジカルに移行してる気がするんですけど… でも、もしかしたらこれは、単に歳とか経験値の問題で、自分たちがプロで何年間かやってきたから、ようやくそういう風になってきてるのか…?とも思えるし、どうなんでしょうね。

神山:両方だと思いますよ。時代の空気感ていうのはちょっと感じますけどね。

文字は世界に溢れてる。/一番読まれてないのは、プロの書いたものってことに/クオリティの指針、それが普遍性。

佐藤:活字離れとか言われてる昨今だけれども、実際には、ネットなんかを含めたら、昔よりもずっと文字は溢れてますよね。しかも、今は読むだけじゃなくて、みんなが綴る側にまわっている。携帯のメールなんてMAX3000文字とかでしょ。下手したらそれだけ打ってる人がいるってことですよね。それでなくとも、しょっちゅう送受信してて。ブログなんかも含めてね、打ったり読んだりは、もうすごい慣れてると思う。だから、活字離れっていうのは、厳密にはウソだと思ってるんです、僕は。

神山:しかも、喋ってるのと同じ速度とテンションで打ててるわけだもんね。すごい。ブログとか2chのテキストを書籍化なんていう企画は、まだしばらく続くと思いますよ。

佐藤:出版社でもばんばん企画書が飛びかってそうですよね。泣けるブログ、とかいって。

冲方:売れっ子ブロガーとかね、無性にむかつきますモンね(笑)。ただ、この現象で唯一の救いなのは、本という形態でまだ読みたいと思ってくれてる人がいるってことですよね。紙媒体はまだ生きる残る。本は生きている。

佐藤:そうか。電車男とかもべつにネットで見ればいいのに、わざわざ、本を買う人がいるわけですもんね。本はどこまで読んだのかとか、皮膚感覚でわかるのが良かったりしますしね。そして文字も、また別の意味では生きている、と。そこに最後の救いがあったのか…ってなんだか救いのない話になってきてますが(笑)。

神山:と、なると一番読まれてないのは、プロの書いたものってことになるんだな。

冲方:うわっっ! がっかりだ!

神山: もしかすると、このままいったら、書きたい人がひとりずつマウンドに上がっては、降りていくっていう状態になるんじゃ… 全国中の人が全員持ち回りで、生産と消費を繰り返すという。セキララ日記っていうのをね、日本中の人が交代で書けばね、日本人の人口分は本が出るわけだし!

冲方:行き着く先はそうなってくのかもしれませんねえ。

神山:ケータイやブログとかノンフィクション性があるものは、情報の鮮度が高い。これは、刺激が強いから魅力的ですよね。フィクションは、そういうものに勝っていかなきゃいけないんですよ。ちょっとくらいのどこかで見たことある風景だったら見向きもされない。相当強固な“見たことある”でなくちゃいけなくて、さらにやっぱり何度見てもいいなーってものじゃないと勝てない。でも今はそういう強度のある作品が少ないんだと思うよ。

冲方:普遍性、ですよね。そこはエンターテインメントだったら、ひとつの柱として持っておかなければならないクオリティの指針ですね。

神山:ベタベタなものは書きたくないっていう気持ち、誰しもあると思う。だけど実は、書かないんじゃなくて書けない、って可能性も高いわけ。強度のある構造。これが今、欠けているものですね。そういう強度の足りないものばかりだから、強度より鮮度をとってしまうのは、仕方がないのかも。

冲方:難しいんですよね。真っ直ぐなものっていうのは。

佐藤:お客さん、悪くない気がしてきた。今の話聞いてると。よくワイドショーで文字離れがどうとか言ってますけど、そりゃそうだって、ことですよね。

冲方:そうですよ、基本的には悪くないですよ。正直なだけ。っていうか、きっと、そのワイドショー自体の方が面白いんですよね、メディアとしては。今まさに喋ってて、5秒後には違う話題に移ってく… 次に何が起こるかわかんないっていうのが。

佐藤:お笑い芸人さんの人気の傾向を見てもそうかも。今って、ショートコントから漫才にいって、漫才から一発芸に流れてますもんね。どんどん手軽な方向に向かっていってる。これも、鮮度をとってるってことか。そこに構造はない。

神山:そんな中で、いちばんリスクが高くて、鮮度を提供しにくいのが“本”というメディアなのかもしれない。そうなってくると、やっぱりプロが時間をかけてかいたものほど、遠ざける感覚もわからんでもないか。

佐藤:読む側にとっても、リスキーですもんね。人によっては1冊読むのに何日もかかってしまうわけだから。ただ、本当に構造の強度が高い作品だったら、何年経っても読みたいって思ってもらえるはずで… でも、それをライトノベルで発見することは難しい現状なのでしょうか。

冲方:ライトノベルでも、一発芸的な作品が多くなってきてる気がするなあ。

神山:数が多いだけにね、追いかけにくくなってる難しさっていうのもあると思う。
でも賞っていうことで言えば、そこへコミットするためのハードルは、どんどん下げていっていいんじゃないかな。そういった人たちが、いつでも何度もチャレンジできる環境をつくれれば。ただ、ここがゴールじゃないってことは、明記した方がいいよ。で、そういうことをわかりやすくするためにも、やっぱり賞金は7000円にするといい(笑)。っていうか、こんな鼎談なんてやってる場合じゃなくてさ! なんだったら、ポッドキャスティングで投稿作品を朗読するとか。

佐藤:ハガキ職人的にモチベーションあげるのか! すごいとこ行き着いちゃったよ(笑)。

神山:いや、そこまで下げるのは、どうかとも思うけどさ! でも、続かないことには意味ないからね。賞をあげる方もあげっぱじゃなくて… 編集者もあんまりイイ飯屋には連れて行っちゃダメだよね。

佐藤:僕だって、デニーズで大満足ですよ。

冲方:普通の会社だって、入社して 2年は教育だって言いますしね。最初の1冊はもう印税2%とかで挿絵なし、とかでもいいのかもしれない。

錆びつくのは、嫌なんだ/自覚的な人/自分の役割を的確にこなして/ロマンチストであり続けるために

佐藤:おふたりにとって文庫とは、どういう存在ですか?

神山:わりと人生の節目、節目には、いつも印象的な文庫本がある気がしますね。人生に寄り添ってる。

冲方:僕にとっては、目標そのものだった。ハードカバーからのスタートだったので。文庫って読者に近いイメージじゃないですか。早くそこまで辿り着きたかった。

佐藤:ちなみに、僕がライトノベルに入り込んでいったのは、夢枕貘さんと菊地秀行さんによって加速したところがあるんです。ふたりとも、文章上手かった。まったくタイプの違う文体なんですけど、ちょっとエロかったりして、小学生あたりだとイイ感じに下半身熱くなって(笑)。

神山:口当たりの良さは抜群。大人の香りをちょっと体験できたよね。

佐藤:その後、ライトノベルは、OVAの人気とともに消費されまくって、一端終わって… ここ5〜10年くらいでまた盛り上がってきてる。そのわかりやすさを武器に、活字離れをひきとめる最後の砦のようにもなっていて。でも、あまりに手軽で居心地がいいせいで、そこでみんなそこで止まってしまっているという。難しいところですよね。ただ、商売としてはまだ旨味がありそうに思えるから、どの出版社も参入するチャンスをうかがっている、という。ま、ガガガ文庫もそのひとつだったりするわけで。でも、落とし穴はいっぱいだということを肝に銘じないと… と思いますね。

冲方:新しい文庫レーベルということで、僕からお願いしたいこともあります。作家っていう大きなひとつのグループがあるじゃないですか、そこに向かっていつも刺激を与えて欲しいんですよ。同じことの繰り返しだと、絶対に発展しないから。新しい企画をどんどん出して、こういう活字の使い方があったんだ!、っていうのを発見させてくれるものにしてほしい。

佐藤:冲方さんがそういうことにすごく自覚的なのって、どうしてなんですか? 例えば、原作だけではなく脚本までやったり、こうした会議みたいなのに顔出したり、っていうのはやっぱりそういうところに理由があるんですか?

冲方:そうですね。錆びちゃうのは、そりゃ怖いですから。

佐藤:僕が知り合った人たちで、面白いものをつくってるなと思う人たちは、そうやって自覚的な人が多いんですよ。アーティスト性だけじゃなくて、どっかでプロデュース能力を発揮していて、自分の立ち位置を把握しながら、シーンを担っているんですね。おふたりはもちろん、紀里谷(和明)さんとか本広(克行)さんとか、みなさん自分の役割っていうのを考えている。今の時代っていうのは、アーティストであっても、「俺の好きな世界を知れ」みたいなことを言う世界じゃなくなってきたのかなって思ったり。

神山:いや、もちろん、最終的にはそうありたいんですけどね。でも、そこに行き着きたいがために、外堀から一生懸命埋めていってるっていうのはある。

冲方:いきなり、本丸攻めても壁が厚すぎますから。

神山:僕だって、ロマンチストでいたいよ。でも、究極リアリストにならなければ、ロマンチストであり続けることは不可能だと思ってるんですよ。

冲方:それ、正しいですね。




冲方丁冲方丁
1977年2月14日生まれ。岐阜県出身。96年『黒い季節』で第1回スニーカー大賞・金賞を受賞し、デビュー。『マルドゥック・スクランブル』(ハヤカワ文庫JA)で第24回日本SF大賞を受賞。小説執筆のほか、アニメ、ゲームのシナリオ企画、漫画原作などの分野でも活動中。

神山健治神山健治
1966年3月20日生まれ。埼玉県出身。85年スタジオ風雅に入社。『アキラ』『魔女の宅急便』等に背景として参加。96年、プロダクションI.Gにて押井守が主催した押井塾に参加後、『人狼』演出『BLOOD』脚本『攻殻機動隊S.A.C』『S.A.C2ndGIG』でシリーズ構成と監督を勤める。現在は『攻殻機動隊S.A.C/SOLID STATE SOCIETY』『精霊の守り人』を制作中。

佐藤大メッセージ

佐藤大 記念すべきガガガトーク第1弾には、勢いがあってイノベイティブな、アニメの監督とアニメ化される側の作家の意見を聞きたかったんです。そこで実現したのが今回の鼎談。
以前、冲方さんにインタビューしたときに「短編に300人の登場人物を出した山田風太郎を超えるために、『マルドゥック』ではそれ以上の人物を出し、風太郎越えを果たす」と言っていた。一方、神山さんも『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』の企画会議で「今回は士郎正宗を完コピして模倣犯になる。模倣の果てにオリジナルをつくる!」と宣言。ふたりとも、自分内ルールをつくり、それを超えていっている。このふたりをあわせたらまず間違いないと思ったし、その予想以上のエキサイティングな鼎談になりました。話しているうちに、新しく『ガガガ』をはじめる僕たちの立ち位置が再確認できました。それは、『ガガガ』はライトノベルというニッチな世界に身を置きながらも、しかしそのカウンターでなければならない、ということ。
公開会議ともいえる鼎談企画ガガガトーク。未だ見ぬ新しいライトノベルの企画書をドキュメントしていきます。

ガガガトーク第2弾ゲストは、東浩紀!!!イシイジロウ!!!

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2006年6月10日

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>>ガガガ文庫のガガガトークが熱い! [ yakubaの日記 ]

2006年6月10日 18:29
ガガガトーク第1弾「冲方丁 - 神山健治」編が終了した。 http://ga3.gagaga-lululu.jp/talk/ 冲方先生すげえ、漏れらの思...