冲方丁×神山健治(3)写真(冲方丁×神山健治×佐藤大) 反目して、共鳴せよ!!!活字とイラストの怠惰な蜜月に刺激を。

神山:アニメもそうなんだけど、ライトノベルもね、ぼちぼち一見さんお断りジャンルになりつつあるよね。

冲方:あー。ありますね。

佐藤:本屋さんの中のコーナー的にも、敷居高い感じになってきてる。

神山:レンタルビデオ店のアニメコーナーもね、今でこそ、ディズニーとかポケモンとかこども向けの作品が多く揃って、お母さんたちも入りやすくなってると思うけど、昔はさ、エロビデオんとこと同じ匂いがあったんだよ。

佐藤:なんか肌色頻度が高いんですよね(笑)。

神山:で、今のライトノベルの棚にも、ちょっと同じような匂いを感じちゃうんです。

佐藤:たしかに、イラストで釣ろうとすると肌色頻度は上がってきますからね。

神山:それが、一般の人の足を遠ざける理由になってる気がする。今、あのコーナーで、目立とうと思ったら、ライトノベルを想像させるモチーフを一切排除したものをポンと置く方が有効だよね。間違えて置かれてるのか? とか思うくらいの。

佐藤:ハヤカワはやりましたよね。桜庭一樹さんの本で、一面、真っ青のやつ。確かに、すっごいインパクトはありました。ま、全部がそうなっちゃったら、どこのポストモダンだよ!ってことになっちゃいますけど(笑)。でも、そのくらい冒険してもイイと思うんですけどね、文庫って形式だったら。文庫本って気軽に扱えるところが良いんだし。これ面白かったよ、とか言ってその場で友だちにあげちゃう、とかね。でも、そういう風にするには、今のライトノベルはちょっと高くなっちゃってるのかな。

冲方:気軽に捨てたり、あげたりできなくなるっていうのは、商品としての足も遅くなるってことなんで、それはあんまり良くないんですけどね。

佐藤:前に、バリに旅行にいったときに、世界中の旅行者たちが読み終わった本を置いていってる本棚というのがあったんですけど、その中に沢木耕太郎の本とかもあったんですよ。で、もらって読んでたんですけど、前に読んだ誰かが引いた線が書いてあったりして… そういうのって、本に刻まれる歴史って感じで僕は好きです。昔ながらの古本屋もよくのぞいていたんだけど、ブックオフが出来てからはみんな画一化されてキレイにされて並ぶようになってしまって。ま、もちろんブックオフもすごく便利なんですけど。

神山:今は、文庫本なのに、ハードカバーかってくらい重たくなってるんですよ。存在が。

冲方:どっかキレイ過ぎる気がしますよね。

食玩的ものにどんどん成り下がっていってしまう/受け入れてくしかないのか!?/文庫だからこそできる冒険がある

冲方:イラストについては、ジレンマですよね。ああいう絵だから売れてるっていう事実は確実にあるから。でも反対に、あの絵だから固定層にしか売れない、という面もあるんですけど。この現象の間をどう橋渡しすればいいのか…。

佐藤:なんなら、もはや作家の文体なんて関係なくなっちゃってますもんね。イラストレーター買いする人もいて。

冲方:うん。それでも、これまでだったら、そういう層の人たちはすでに大人で経済力もあったから売上げを支えてんですけど、だんだんと卒業していってしまったわけ。今やそこんとこがごっそり抜けてしまいつつあって、だから産業として成り立たなくなってきてるんですよね。これは、イラストに頼りすぎた反動は、少なからず来てるんだと思いますよ。

神山:イラストレーターにしても、本文は読まずに書いた、とか平気で言うもんね。制作進行上やむを得ず、というわけじゃなくて単に「めんどくせー」ってだけの理由でも。そういう場合だともう、はなから作品とリンクする気なんてないんですよ。だから例えば、イラストが人気あるみたいだから、イラスト10倍くらい増やして、文章半々くらいの形式でいきましょうよ!とかいう企画を立てたとしても、きっとイラストレーターさんは喜びやしないんだと思うよ。そこまで、関わる気はないんだよね。数枚描くくらいがちょうどいいのかな。

冲方:そういう現状があるとして、それでもコンテンツをまわしていかざるを得ないっていうのは、編集側にとってもギリギリの選択ではあると思う。でもね、一番の問題は、文章書く側にあるんじゃないかな。イラストレーターさんをやる気にできないのは、作家側が一定レベルのクオリティを提供できてないせいなんじゃないか、という気がする。
結局、絵描きさんだってなんだって、クリエイターっていう人種は、常に刺激が欲しいわけなんですよ。どんなに忙しかろうと、自分が錆びついちゃうのが一番怖いわけじゃないですか。そこで「読みたくない!」って云われちゃうんだとしたら、それは刺激のない面白くない作品だってことですよ。だとしたら、これはそのまま作家さんに伝えてあげてですね──。

佐藤:うわ、アイタタタ(笑)。それ、この場では、冲方さんにしか言えないことだよ!

冲方:でも、これは早く手を打たないと、やがて読者にも伝わっていってしまうことですから。このままでは、イラストが載ってるから買うけど読まない、みたいな、食玩的ものにどんどん成り下がっていってしまうんですよ。

佐藤:すでに、ちょっとそうなってますもんね。自宅の本棚では、イラストレーターさんの名前で分けてるファンもいるって聞いたことあります。

冲方:うわ、危険だなあ、それ。もはや作家は記号でしかなくなってるのか!

佐藤:そう、作家名も文庫レーベルも関係なくイラストで整理されているんですって。

神山:そうか… ならば、もはや、そういうジャンルだと思って受け入れていくしかないような気が…。

一同:(爆笑)。

佐藤:でもそれはさすがに、物語を書く方はイヤでしょう。

冲方:そうですよ! そんなの絶対発展しませんよ。そうか、わかった、じゃあ逆にイラストレーターさんに10枚好きな絵を描いてもらって、それを小説化するっていうのでどうだろう。このイラストに話をつけろ、っていう。

佐藤:あ、僕、それと似たような企画を、森本(晃司)さんとやろう!って盛り上がってたことありますよ。誰かのカメラの中に残されてた1本のフィルムから現像した写真1枚1枚からイメージを膨らませて繋げてストーリーをつくっていこう、っていうものなんだけど。

神山:イメージからのノベライズか。なるほど。それなら、少しは新しいアプローチ方法が残されているかもしれない。

冲方:いぜれにせよ、そろそろライトノベルのクオリティにも、指針を見出していかないといけないんですよ。音楽とか絵って、キレイとか上手いとかって、感覚的に大体わかるじゃないですか。でも文章って、基準がよくわからない。面白いけどどうなの?とか、読みやすいけどどうなの?とか、これって買う価値あるの?とか。曖昧なんですよ。そもそも買う価値のある文章ってなんなんだよっていう。
なんというか、ライトノベルっていうのは、アニメとかゲームに近い位置にありすぎて、その辺を混同しちゃってる気がする。ゲームやアニメのシナリオの法則を、そのまま小説に持ってきても、クオリティは上がらないんですよ。それっていうのは、どうしたってアニメやゲームで見た方が映える作品になってしまうんです。

佐藤:神山さんの言うところの映像汚染、ですね。ただ、そんなところにも頼らざるを得なくなっている、というのは現状ではありますね。

冲方:でも、そんなんだから、もともといたライトノベルファンも大量に離れていっちゃったんだ、という意見もあります。イラストにしてもそうですよ、編集者も、今どきイラストレーターを半年もくどく、とかやってないで(笑)、これさえ読ませればあの人も動く、というような作品を作家と一緒につくっていかないとダメなんですよ。逆に、イラストレーターさんが「こういう絵が描きたいんですよ!」ってすごい魅力的な絵を持ってきてくれたら、僕は書くだろうし。常に、刺激し合っていたいですね。

次!!疾風怒濤の最終回!!!6/9 更新予定!!!!

冲方丁冲方丁
1977年2月14日生まれ。岐阜県出身。96年『黒い季節』で第1回スニーカー大賞・金賞を受賞し、デビュー。『マルドゥック・スクランブル』(ハヤカワ文庫JA)で第24回日本SF大賞を受賞。小説執筆のほか、アニメ、ゲームのシナリオ企画、漫画原作などの分野でも活動中。

神山健治神山健治
1966年3月20日生まれ。埼玉県出身。85年スタジオ風雅に入社。『アキラ』『魔女の宅急便』等に背景として参加。96年、プロダクションI.Gにて押井守が主催した押井塾に参加後、『人狼』演出『BLOOD』脚本『攻殻機動隊S.A.C』『S.A.C2ndGIG』でシリーズ構成と監督を勤める。現在は『攻殻機動隊S.A.C/SOLID STATE SOCIETY』『精霊の守り人』を制作中。



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2006年06月03日

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>>ガガガ文庫はラノベに風穴を明けるか? [ アフィリエイトとヤクバハイル ]

2006年06月05日 17:58
ガガガ文庫はラノベ業界に風穴をあけるのか?